弊社編集協力の書籍『錦織一清 演出論』出版記念イベントが行われました!

2022年12月7日、『錦織一清 演出論』の出版記念イベントが開催されました。

それに先立ち行われたマスコミ向けの会見の模様をお伝えいたします。


★開会~錦織さんよりごあいさつ

「今日はどうもありがとうございます。今回、写真集以外では初めてこういう本を出させていただきました。演出論というタイトルで、一見横柄気味に感じるんですけど、中身を読んでいただければわかると思いますが、僕の持論が書いてある本で、かなり内容的にはカジュアルな形で書いてありますので読みやすい本ではないかと思います。本日はありがとうございます」


<質疑応答>

Q/この本の出版までの経緯は?

錦織/このお話を持ち掛けたときに日経さんの方でやってもらって、かなりスピーディーにできたと思っているんですが、出るに至ってはかれこれ数十本という作品を演出しながら、僕は最近若い子たちとのお仕事が増えまして、なぜかというと自分が年を取っただけなんですけど(笑) いろいろ喋っているうちにお芝居について質問とかをされたとき、毎度同じようなことを喋ってるんですね。僕はいろんな意味で、作り手としても自由がきく年齢だったりとか、その中で感じられることっていうのを、今、若い子たちに説明してることを、なんか形にして、1個 残しておいた方がいいかなと思ったんで、そんなちょっと我儘から作らせていただいたっていうのが、この本に至った経緯であります。


Q/完成したものを見てどういうお気持ちですか?

錦織/僕もそういったメソッド的なものの本とかに目を通したことはあるんですけども、なかなか僕なんかが読んでもちっともわからないんですが、ステラ・アドラー・メソッドであったりとか、アクターズ・スタジオでこんなことやってるとかいうのを見たんだけど、僕も恥ずかしながら本格的に演劇なんていうのを真剣に勉強したこととか、習ったこともないので、そういった意味では本当に、先ほど申し上げましたけども、意外と分かりやすく説明できているんじゃないか、カジュアルなんじゃないかなと思います。これは、なるべく簡単なものにして、どちらかというとこれからお芝居を始めたい人が、手軽に説明を分かりやすく、 難しい言葉も大して使わず、スムーズに演劇の世界に足を運べたらいいんじゃないかな、その何かをお手伝いできたらいいなと思って書きました。


Q/本にも出てきますが、錦織さんがジャニー喜多川さんとつかこうへいさんのお二人からどのような影響を受けたかというのを改めてお願いできますか?

錦織/なんとなく僕の人生の中と言いますか、その昔、ずっと歌手としてやっていた歌番組の多かった80年代になりますが、そのときに1度黒人ボクサー役の『GOLDEN BOY』という作品で主人公をやらせてもらった時が、1988年だったと思うんですけどね。そこが僕も初めて 少年隊というグループじゃなく、単独で舞台に参加させていただいたんですけど、なんとなく、その時の分岐点とか。

20代後半から30代前半に至るまで、ものすごい東宝さんのほうでミュージカルとかに出させていただいてお世話になりまして、その後につかこうへいさんと出会って、またそこが僕の人生の分岐点になったんですけども、その通り道を通ってきたら、つかさんの背中をみてる時に演出なさってる姿とか。

本番で、つかこうへいさんという方は、決して客席でご覧になってる方じゃなくて、本当に僕らに寄り添ってくれるように、舞台袖のどちらかに必ずいて、やってる最中はアドバイスをくれたりとか、そういう姿がどこか懐かしさを感じて、「なんだろうなこのノスタルジーな感じ」と思ったら、それは実はジャニーさんが若かりし頃、多分僕ら全盛の時代がちょうどジャニーさんは今の僕のような年齢だったと思うんですね。

そのときにものすごい精力的に動いてくれて、それこそ寄り添いながら、袖で色々本当に本番中にアドバイスいただいたりとかしたのを思い出したんで、何か僕の中で感慨深いものがあるのが、そういった演劇をやって、後につかこうへいさんと知り合いになったことが不思議と、もう一度ジャニーさんを見直すきっかけになったって言いますかね。 それが不思議な感じで、この本の中にもちらっとそういうことに触れていると思います。


Q/ちゃんと芝居の勉強をしていない人たちに、何か勉強しなくても学べるメソッドというか、その辺りで伝えたい部分というのは?

錦織/僕なりのメソッドっていうものは、基本的に立ち返るところって申し上げましょうか。ちょっと迷ったら、ここに立ち戻ると、割とスムーズにいくんじゃないかっていうような書き方、説明をしてるところもあるんですけど。

最初舞台の上でセリフを言うということの仕事をいただいた時に、何ができるのかと。本当に勉強してませんでしたから。で、たまたまうちの姉がちょっと年離れてるんですけど、高校時代は小岩高校っていうところで、演劇部に入ってましてね。その時に「外郎売(ういろううり)」を練習してたりとか、僕その姿を見たことがあったんで、「ずっと昔のことだからないと思うけど、外郎売の本、あったら貸してくれよ」ってちょっと姉に聞いてみたら、姉が実はずっと持っていて、それを借りて、独学で外郎売を暗記したりとか、そういうことをやったんですけど。

実際それをやってきても、 そこに意味があったかっていうと、外郎売を舞台でやるわけでもないし、本当に無礼な言い方ですけど、発声練習で「アエイウエオアオ」なんていう言葉あるけれども、でも、決して日本語の中に「アエイウエオアオ」としての言葉がないんですよ。だったら、もっと言葉を勉強した方が良かったりとか。

だから、本当に僕はそういう意味で、今こうやって横柄に見えるかもしれないけど、こんなこと喋ってるってことに。でも今に至るまでっていうのが、どちらかというと独学でしたので、随分遠回りしてきたんだなと思うんですね。それでやっと気づいたこともあったりとか。

その昔は80年代の若かりし頃に1人でやり始めた頃っていうのは、もうちょっとやっぱり行儀の悪いタレントだった時もありますから、そんな生意気なこと言ったりとか、そんな紆余曲折ありながら、やっとここまで来た感じっていうのを、今、その当時の僕ぐらいの子と向き合った時に、遠回りしない方がいいんじゃないかと思うんですね。

僕の中で感じた、今の若い子たちがかっこいいと思ってるものであることが、実は舞台の上では通用しなかったりとか、立ち姿一つとっても、 今の若者がこれでかっこいいんだというような立ち姿だと、ちょっと小さく見えるとか。実は映像とちょっと違うところがありまして、舞台っていうのは、やっぱり自分で背筋を伸ばさないと大きく見えなかったりとか。 カメラ操作がないわけですから。今この瞬間は自分がお客さんに対して、自分でクローズアップして、お客様は自分のことをアップで見てるであろうとかいうことを自分で作んなきゃいけないとか、若干あるんですね。そういうことをわかりやすく、ここに例として。

コーナーのタイトルにもなってるんですけど、若い時って割とみんないぶし銀が好きなんですよね。そういう風になるってことに憧れてるんだけど、もうちょっと若いうちは、それよりも最初に銀色に輝いた方がいいよね。それで、のちにいぶされてくるんですよね。それが味っていうものになってくるから。ちょっと勘違いして捉えてるところをちょっとお手伝いして、ヒントを与えてあげれたらなっていうふうに思っています。


Q/では、若い人たちに何かを伝えるようなことを想定してたのでしょうか?

錦織/そうですね。ここで喋ってることっていうのは、全部稽古場で言ってることを思い出しながら。まだ他にもおそらくもっとあったんじゃないかと思うんですけども。

僕は舞台のお芝居っていうのは、当然共演者の方っていうのがいるんだけども、お芝居はやっぱりお客さんとやったがいいんですよね、お客さんとやってるんですよね。間合いっていうのは、お客さんとの間合いであって、多分こういう出演者同士の間合いっていうのじゃなくて。

だから、僕は松竹新喜劇の藤山寛美先生とかね。昔、子供の頃、父が好きだった影響でよく見てたんですけど、そういうことのお客さんとの間であったりとか、やっぱり本当に笑いを生み出せる、 そういう舞台人って言うんでしょうかね、そういう人たちがやってることっていうのがすごく今この歳になって、あああの藤山先生がやられていたことがすごかったんだろうな。渥美清さんは、それを映画の中でやってらっしゃるなとかね。なんか気づくことがいっぱいあって。

僕は今気づいたんですけど、なるべく早く気づいて、若い人たちはかっこよくなった方がいいと思うんですね。見せかけのかっこよさに行かない方がいいなって、ちょっと僕は生意気ながら、うん。それはちょっと若い人たちたちよりは少し演劇界でも、人生のちょっと先輩でもあると思ってるんで、 そんなお手伝いができたらなって思っています。


Q/いま「外郎売」の練習をするよりは、もっと言葉の勉強をした方がいいとのことでしたが、言葉というものを深めるために、どういうトレーニングをしたらいいのでしょうか?

錦織/これ『演出論』っていって、演出論のところもあったり、演技論だったりとか。実は最初の段階でタイトルを決める時に「表現論」にしたらっていうのもあったんですけれども、どちらかというと、芝居をするっていうことの意味を、ちょっと僕もテクニックに走ったぐらいの歳の時に、ちょうどつかこうへいさんと出会いまして、自分の中にある自尊心だとか、思い上がったものとかを、本当にぼきっと折られた形だったんですね。だから、そのお芝居をすることなのか、表現とか、感情の動かし方…。もし、テクニックばっかりになると、伝わるものも伝わらないような気が、僕はしまして、また「外郎売」のことに戻りますけど、これお名前は出しませんけども、知り合いの役者さんでね、「俺、『外郎売』全部言えるんだよ。今でも暗記してるから、今でも言えるよ」っていう。その役者さんが舞台でカミカミですからね。(笑)「外郎売」のテクニック使ってないじゃないですかっていうのがあるんで。でも、もちろんやった方がいいとは思いますが。


Q/錦織さんを拝見しているとお喋りも上手だし、人との会話などから、言葉というのが自分の中に培われていくのでしょうか?

錦織/それは、やっぱり僕らって本当に何もないんですよ。舞台に出た時に、ジャニーズ事務所に入って踊りのレッスンはみっちりやりますけど、そこから舞台の上で何を喋るかっていうのは、全部台というところがあって、どんなお芝居っていうのも任せられてるところもあるんで、すごく怖かったんですけど、そういう意味では。若い頃からこうやって登壇して喋るみたいなことっていうのも、なんかここで喋ってしまえよっていうことを植え付けてくれたんだなって。今思うと、ジャニーさんの凄さはやっぱり感じるし、それがやっぱり温かかったんだなとか思いますね。

で、僕がお芝居だなんだ、お客さんとの間合いを作りたいって言ってるのも、要はこれ酒飲んだ時ですけど「お芝居ってなんだよ」って話ってよくなるんですよ。難しい答えを持っている人もいますけど、僕の場合、お芝居は舞台上で演技をしてっていう、そういう目しか僕らって、仕事としてやることが何も技術的なものを持ってませんから、それをやるの精いっぱいなんですけど、それっていうのはやっぱりお客さんがいて、ですから、極端な言い方すると、僕は接客だと思ってるんです。

だから、飲食店にはいって、コース料理を頭から色々、最後のデザートまでとかセットで楽しませる。飲食店はそういう演出になってるじゃないですか。 でも、僕らは料理作る技術も何も持ってないし、カクテル1つできるみたいな飲み物1つ出す訳にもいかない、何ができるか。歌ったり、踊ったり、あとお芝居したり、これなんだなっていうことで、それを精一杯、接客としてやらせてもらってるっていうことです。


Q/年末なので、今年2022年にご覧になった舞台作品、どんなジャンルでも結構なんですけど、特に感動したとか面白かった作品なんかはありますか?

錦織/今月も実は行けるかどうか、ちょっと今スケジュールが忙しくて、本当によその作品をもっといっぱい見たいのがあるんですけど、でも、時間がある限り僕が必ず見て、いつも勉強させていただいてる劇団が、下町の方のすみだパークスタジオというところで上演してる「桟敷童子」は毎度行くようにしてるんですね。

かれこれもう何年も前からファンで、毎度通わしていただいてるんですけど。お芝居的には北九州の炭鉱町の話だったりとか。ちょっとすすけたような、汚しかけてるお芝居なんだけども、出てる役者さんたちたるや、ものすごくその人間、役者さんたちから出てくる品格というか、品性の素晴らしさっていうんですかね。それにいつもびっくりしてて。仕事が詰まってて、次にこの作品この作品と追っかけるだけになってますけれども、そういうことが一段落して、ちょっと自分の気持ち、頭の中飽和状態になってるかなっていう時は、いつも桟敷童子を見させていただいてリフレッシュというか。

本当に皆さんの中にも多分あると思うんですけど、この劇団とかこういうお芝居と出会えてよかった。自分もお芝居を、こういう仕事をやっててよかったなっていう風に思わせてくれるお芝居をいつも見せていただいてます。


Q/「サラリーマンナイトフィーバー」の東京公演がありますが、カンパニーの方にこれを読んでおいてほしいとか、要請しますか?

錦織/もう一回聞く話になりますけどね(笑)まあ読んでおいていただけると。それはいいことだと思う、それも実はあるかもしれないですね。たとえば、来年入ってからまだ新しい舞台も何本か作んなきゃいけないんですけど、その時に斜め読みぐらいでもいいですから。ちょっと目通していただけるだけで、説明しやすいかなって。そこに興味を持っていただいて、「詳しくはどういうことですか?」って聞けるような、そんなヒント程度のことが書いてありますので、もちろん読んでいただきたいですね。


Q/それ以外で誰かこれを読んでもらいたい人はいますか?

錦織/うーん、こういうことっていうのは、あんまり公で言うべきことというか、あまり皆さんに関係ないことで、僕の中で控えようとしてることなんですけどね。やっぱり初めてこういう書籍になって、 親父が2018年に他界しまして、うん、こういう形になったってことをね。あのー、親父に見せてあげらんなかったことぐらいですね。見せたかったなと思ってね。まあ、あんまり僕らプライベートでそういうことっていうのは言うべきことじゃないと思ってるんですけど…、うん、親父に読ませたかった。


Q/錦織さん演出の舞台ってダジャレが入ったり、そういう特殊な世界があると思うんですけれど、改めて錦織さん自身は、演出家としての錦織ワールドをどう思いますか?

錦織/これ、よく役者の人たちと笑いながら喋ってることなんだけど、ブレヒトさんが言ったのか、誰が言ったのか、異化効果っていう言葉が僕、ちょっとこうひっかかって、自分の中でなんかテーマにいつもなってるような。楽しさの裏側が寂しさでとか、喜びの裏側が怒りであったりとかって、なんかそういうような裏返しのことを常に考えてるような人間でもあるんですけど。

その中で基本的に、まあ笑い話ですけど、「舞台の芝居って、テレビとか映画よりは制限なくていいよね」っていう話をして。だって、舞台のお芝居ってきっと言いたいことが1つか2つなんだけど、そこを遠回りして、最後の結論、ラストシーンに向かってくるっていうことだと思うんですけど、そこまでの遠回りの仕方を面白くしたいね。映像とかがコードにひっかかるようなことが少し舞台っていうのはできてくるんじゃないかなと思うとこで、よく喋ってるのが、別にやらなくてもいいこととか、言わなくてもいいダジャレとか、そういうことに埋め尽くされてる舞台ってすごい好きなんですね。うん、本当にもう心の底からくだらないって言い方ですか。でも僕は好きなんですね。なぜかというと、心の底から下だらないものが1番人を傷つけないから、

なんか良かれと思って、まっすぐ作ってても、どうしてもそこで僕たちってのは。食べ物ひとつそうですけど、なんか難しいんですね。食べ物を「嫌いです」って言い方をしてしまわないように、僕は心がけるんですけど、「苦手です」って言い方をしようとかね、「この食べ物嫌いだよ」って言ってしまうと、その食べ物を作ってくれてる人たちがいますよね。農家の人なのか、畜産なのか、それを作ってる人は、実は傷つきますよね。

なので人間って、普段からちょっと気をつけなきゃいけないのは自然にそういう傷つけることを言ってしまってるわけですね。だから、なるべくそういうことを舞台上ではなくしたい、もしくは必要としたら、主人公に向かって言わなきゃいけない残酷な言葉として用意してるセリフだったらいいんですけど。

あとはやっぱり僕のお芝居を見たら勇気を持っていただきたいし、それを僕はつかさんから教わってね、だから、つかさんのお芝居も本当にやらなくてもいいこと、言わなくてもいいことに溢れたお芝居。でもそれが勇気になったりとか。

僕もまだ『サラリーマンナイトフィーバー』で、そこまでの本を書けた訳じゃないんですけども、この間もまだつかさんの末裔たちがやってる劇団の劇団員と話したんですけど、つかこうへいさんのお芝居のすごいところっていうのは、つかさんも本当に前半冗談ばっかりやってるんだけど、一番最後つかさんのお芝居って、登場人物全員が勇敢になるんですよね、

何かに勇敢に立ち向かうんですよね。人数も少ない芝居でみんなも見たことあると思いますけど、『熱海殺人事件』なんていうのは、なぜか殺人犯である大山金太郎は、勇敢に十三階段を上がってくんです。なぜか。うん、なんかそこでやっぱり勇気与えたい。そういう意味ではちょっとくだらないかもしれないですけど、ダジャレ言ったりとか、そういうくだらないことでやっぱり和んでいただいて、真髄は違うところに持っていく。

わざとというか、それを心がけて、そういうのがちょっと習慣になり過ぎているきらいはあるんですけどね(笑)。


終了~写真撮影~閉会


■書名:錦織一清 演出論

■著者:錦織一清

■発売日:2022年11月28日(月)

■定価:本体2000円+税

■発行:日経BP

■発売:日経BPマーケティング

■仕様:四六判・並製・約240ページ

■ISBN:978-4-296-20139-6

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